アカセニッキ(明瀬祐介日記)

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所感

日大アメリカンフットボール部内田正人・井上奨を擁護する。

投稿日:2018年10月22日 更新日:

■平成30年(2018年)5月6日の大学アメリカンフットボール、
日本大学-関西学院大学戦の事件については、
一時期、マスメディア、ウェブ上でさんざんに批判がなされていた。

 

■特に問題となっているのは第1クオーターの反則だ。

関学のQBがボールを離した約2秒後に
日大のディフェンスライン・宮川泰介が後ろからタックルを行ない、
関学QBに怪我をさせた場面-。

この事件でアメリカンフットボール部の
監督・内田正人、コーチの井上奨は
さんざんマスメディアからもウェブ上からも非難された。

あたかも内田・井上が直接
「反則して相手QBを怪我させろ」
と宮川に指示したかのような言われようだ。

 

■私はアメリカンフットボールの専門家ではない。
何度か試合を観たことがある、程度の素人である。

それでも素人なりに考え、以下に主張してみたい。

結論から言うと内田・井上は問題の1Qの反則に関しては、
ほとんど何も悪くない。
指導・監督責任はあるけれど、それ以上の物はない。

一部のマスメディアやウェブ上の論者が言うほど
内田と井上に責任があるというのは、ちょっと違うと私は思う。

(本文中では敬称を略す。
また、宮川については一部で実名を伏せられているが、
本人が実名・顔出しで会見を行なっており、
調べれば誰でも分かるものなので、
この文中では実名を出す)

 

■宮川が会見で述べたことでまとめると、次のようになる。
・宮川は試合以前から、再三、内田・井上から
「やる気がない」
「優しすぎる」
「おとなしすぎる」
というようなことを言われていた。

・宮川は内田に、
「相手のQBを潰しに行くんで使ってください。」
と直訴した。内田や井上からはどちらからも
「よし、どんどんやれ」
というように言われた(言葉はいろいろ違う)

・宮川は「リードをしないでQBに突っ込みますよ。」
とも言い、了解を取った。

・問題となっている反則後、井上からは、
「キャリア(ボールを持っている選手)に行け」
と言われたが、意味が分からなかった。

 

■まず、前提として、
「潰せ」「潰す」
という言葉はアメリカンフットボールの中で、
「タックルをしろ」「ぶつかれ」
という意味で、ごく頻繁に使うものだ。
(* もちろん正当なタックル)

タックル、それに伴う衝突抜きで
アメリカンフットボールというスポーツは考えられない。
おそらく全国のアメリカンフットボール関係者は
一度は(というよりも毎日のように)
「潰せ」という言葉を使ったことがあるはずだ。

「相手QBを潰せ」
というのは
「(もちろん正当な)タックルをしろ」
という意味だと普通は捉えられるものである。

これであの例の反則をするのは、
野球で「ランナーを刺せ!」と指示されたセカンドが
刃物でランナーを刺しちゃうくらい異和感がある。
(いや、この例えも変だが)

 

■「怪我させろ」だってそうだ。

この言葉は「潰せ」より穏当ではないし、
アメリカンフットボール界隈でもあまり使われるものではなかろう。

しかしアメリカンフットボールという競技は、
ちょっと見た人ならわかるが、格闘技であり、
正当なプレイをしていても怪我させるものなのである。

実際に正当なタックルで相手に怪我をさせても
それはアメリカンフットボールの競技の範囲のものであり、
怪我させた者が即座に悪いというものではない。
(というより、普通は悪くない、とされる)

しかしルールの中で正当なタックルをしても
怪我させるような競技なのだから、
「怪我させろ」という言葉だけで
「反則せい」と言ったとは言えまい。

(*同様に、
「リードしないで相手に当たる」
のもそれだけでは「反則する」という意味にはならない)

 

■宮川の会見のどこを読んでも彼は内田や井上から
「相手がボールを離したずっとあとで、
後ろから当たって反則しろ」
なんて言われていないのである。

普通に考えて
「相手QBに(正当な)タックルをしろ。
怪我させる気持ちでやれ」
という程度の意味だろう。

現に例の反則後、宮川は井上から
「ボールを持っている選手に行け」
と言われているのだ。

それで内田や井上から宮川が
「反則しろ」
「相手QBがボールを離した数秒後に、後ろから当たれ」
と指示していたかのいうのはうがち過ぎというものだ。

 

■では、内田と井上が何も悪くないかと言うと、悪い。

日頃から
「アメリカンフットボールは相手にぶつかり、
怪我させることもある競技だが、
ルールは守れ」
とチームのメンバーに教え、徹底していなかったことであり、
問題の1クオーター目の反則後、
即座に宮川を退場させたり、毅然とした態度を取らなかったことである。

試合後には宮川をほめるような発言もしており、これも誤解を生んだ。
ただ、これに関しては宮川を擁護する側面もあるから
私は簡単に批判できない。

また、日頃の指導があまりにも厳しく、
選手の精神的なプレッシャが大きくなって、
選手が普通の判断力をなくすようなこともあったろうことは
やはり現代の指導者としては不適格だろう。

 

■しかし、それでも一部のマスメディアやウェブ上の論者が言うように、
内田・井上が直接、宮川に、
「反則して相手QBを怪我させろ」
と指示したというのは、ちょっと違うし、
無理筋だろうと私は思う。

(* 日大の体制がどうとか、
日本の体育会文化がどうとかいう話は私は知らん)

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