アカセニッキ(明瀬祐介日記)

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漫画

いつになったら浦沢直樹は「NASA」を描くんだよ!

投稿日:

■浦沢直樹の初期の漫画を集めた
「初期のURASAWA」
という短篇集がある。
(あるいは「NASA」「踊る警官」の二冊)
https://www.shogakukan.co.jp/books/09192692
https://www.shogakukan.co.jp/books/09185830

今とは違う絵柄で、
内容も無茶苦茶な、
この頃の浦沢が、
私は大好きなのだ。


■食事が少ない病院を抜け出して
屋台のラーメンを食べるため、
相部屋の三人組が
夜中に脱走を試みる、
「夜の空腹者たち」。

最後、脱獄に一人だけ成功し、
紙テープ
(実はトイレットペーパー)
が舞う中、割り箸を
「パリッ」
と割る場面の快感-。


■あるいは「務め人走る!」。

大事な取引に送れそうなサラリーマンが、
タクシーに乗るのだが、
道が渋滞して進まない。

イライラしたサラリーマンは
運転手に文句を言って降車し、、
首都高を足で走り、高架から飛び降りる。
プライドを傷つけられた
タクシー運転手も黙ってはいない。
抜け道の知識を駆使して
サラリーマンを抜きにかかる。
目的地までサラリーマンの足と競走だ。

ラストではサラリーマンは
目的地手前で待っていた上司を
ラリアットで吹っ飛ばし、
タクシーとの決着をつけに行く。


■いずれも面白いのだが、
ここで語りたいのは「NASA」
という作品である。

四十九歳のサラリーマン・野村が、
「日本人初の宇宙飛行士」を目指し、
自分たちの手で低予算の宇宙ロケットを
飛ばそうとするのだ。

未完のまま二回で終わっており、
ロケットが飛び立つことはなかった。


■堀江貴文たちの
インターステラテクノロジーズ、
モモ3号の様子を
TVの報道で視たときに
思い出したのがこの漫画だった。
(次に「王立宇宙軍」だ)

例えばモモの技術者たちは、
安いコネクターか何かを探しに
秋葉原かどこかの店を歩き周っていたのだが、
「NASA」にもそれに近い描写があった。

どうしても作れなかったのは
ロケットエンジンだが、
在日アメリカ軍の廃品を入手する。

埋立地で燃焼実験をして、
深夜の街を爆音でたたき起こすところが、
この漫画の、(今のところの)
クライマックスだ。


■「初期のURASAWA」での
インタヴューでは、
描かれることがなかった、
打ち上げ場面が浦沢によって語られている。

いろんな店にスポンサーを頼み、
資金を調達して、
看板を背負って飛ぶロケット。

たぶんこの漫画を描いた当時は
「商店街が宇宙のスポンサーだなんて」
と、浦沢自身、半ばギャグで
用意していたのだと思う。

しかし現実は想像から
そう遠く離れてはおらず、
モモ3号も確か
洋食屋のハンバーグを
載せていた。
もちろんインターステラテクノロジーズは
それだけで資金調達したのではないけれど。


■「この頃はいなかった
日本人宇宙飛行士がどんどん飛んでる」
とインタヴューで語り、
「だから、いまさら続篇を書いても…」
という感じを出す浦沢。

が、それは謙遜のしすぎというものであろう。

確かに、この頃はいなかった
日本人宇宙飛行士が、
今やたくさん飛んでいる。

そして令和元年、
日本初の民間宇宙ロケットも成功した。

しかし、その二つを合わせた、
令和の今なお、まだ誰もやっていない
「民間ロケットによる有人宇宙飛行」を、
昭和の日本でやろうとしたのが
「NASA」ではないか



■その先見性と、
気宇壮大さに
私は感動を覚える。

つまり何が言いたいのかと言うと…、

俺は二〇年以上待ってるんだが、
まったくいつになったら
浦沢直樹は「NASA」の続篇を描くんだよ!

令和元年七月五日
明瀬祐介(あかせゆうすけ)
acsusk@gmail.com
https://twitter.com/acsusk/

-漫画

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