アカセニッキ(明瀬祐介日記)

少しだけ役に立つ、または面白い内容を提供できれば。

所感

受験算数ってまじで無意味な代物だよな。

投稿日:2019年7月11日 更新日:

■前回、
「ゆとり教育」のように、
「試験範囲を限定する」形で
「縛りプレイ」をさせても、
問題が(範囲の中で)
やたらと複雑になったり、
時間が厳しくなったり、
競争が激しくなったりして、
決して「ゆとり」を増やす方向にはならないし、
そもそも学ぶ
「数学的概念」を少なく絞った中での
「ノーミス対決」「スピード対決」
をしてもなあ-。
という話を書いた。
https://acsusk.com/20190710-1-yutori

しかし、大学受験はまだよいほうだ。
本当に「縛りプレイ」がきついのは
「中学受験」
「受験算数」
である。


■ご存知の通り、中学入試には、
小学校で学んでいるものより、
格段に難しい問題が出てくる。

難関中学受験生は、
小学四年生までには
小学校の算数の全課程を
学んでいるという。

では、あとの二年間は何をしているのか。

ひたすら「算数」の難問を訓練し続けているのだ。
学問の「範囲」を広げることなく、
ただただ複雑になる問題を解き続けている。

「○○算」というやつである。


■この問題は
「中学入試で”何々算”つかうのやめて、
方程式つかったらええんちゃう」
という疑問で端的に表され、
ウェブ上では
「中学入試で方程式を使ってもよいか
(きちんと加点されるか、減点されないか)」
「中学入試受験生に
方程式を教えたら、
有利になるか」
という点については、散々議論されている。

前者については、
「方程式を使ったからと言って
減点になることはない」

後者については、
「でも、方程式を教えない方が有利」
ということで、
ほぼ結論は出ているようだ。
(それに異論はない)

しかしもっとメタな視点からも
議論されるべきだろう。

「そもそもその”算数縛り”を、
多くの中学入試受験生に
何百時間とやらせることに意義があるのか」

つまり、こういうことだ。
「”範囲”を広げてしまえばいいのではないか」-。


■これに対しても、反論はある。

「算数で解くことによって
頭の柔らかさが、発想力が身に付く、

楽しみがあり、感動がある」
とか言われるのだ。

どうも
「”算数”は数学とは別の道で、
それを極めることによる歓びがあるのだ」
という考えが根底にあるらしい。


■そもそも「算数」とは何で、
「数学」とはどう違うのか。

よく言われるのは、
「算数は身の回りの具体的なことを扱う。
数学は抽象的な学問だ」
という点だ。
確かに加減乗除や割合計算は
日常生活や 仕事でもよく使う。

しかし例えば
「三角形の内角の和」
なんてのは非常に抽象的だと思う。
「数学的」だ。
「分数どうしの割り算」
だってかなり「数学的」である。


■また、
「算数は証明がなくても使えるものは使う。
数学は証明がないと使わない」
というような指摘もあろう。

確かにその通りだが、
中学の「数学」でもそうだろうか。
「角錐の体積の求め方」
の証明を、習ったことがあるだろうか。

(この計算方法は中学で習うが、
証明と言うか1/3を掛ける意味は
高校まで習わない)


■あるいはイングリッシュには、
「算数」にぴったり相当する言葉はない。

「数学+算数」にあたる「math」と、
「計算法」とでもいうべき
「arithmetic」があるだけだ。

中国でも、
初等教育で学ぶものと
中等教育で学ぶもの、
ともに「数学」である。

そもそも日本においてさえ、
「どこまでが算数で、 どこからが数学か」
というのは、そのときの学習指導要領による。

学習指導要領などというのは
文部官僚の匙加減で決まるものだ。
「たまたま」今の学習指導要領で
規定されている、というようなものに、
そんなに大層な意味があるのか。

…などということを考えると、 どうも
「試験を”算数”だけで作り、
それを受験生が一生懸命考える、
“算数縛り”による、有難い効用」
なんてものが
(まったくないとは言わないものの、)
ずいぶん怪しくなってこないか。


■「算数縛りプレイ」は、
どう考えても、
「中学入試」の「試験範囲」の関係で、
たまたま誕生しただけだ。

しかし、これをやっているうちに、
「数学を使わへんのもおもろいやん!」
「発想力も見につくんちゃう?」
という気持ちになってきた。
(この効用は私も確かにあると思う)

あるとき以降は、
たまたまできただけの
「算数」に愛着を感じ、
その価値を大きめに評価するようになり、

大きめに喧伝し、
さらにどんどん愛着を感じるようになった
という側面が強くないか。

このような現象を、専門用語で、
「フェティシズム」という。


■「その効用があるとして、
それは、”算数縛り”でしか得られないか」
「”算数縛り”を何百時間もやる・やらせる以上に
有意義な時間の使い方はないか」
ということを考えるべきだ。

俺には、どう考えても、
ものすごく勉強のできる小学六年生たちに、
彼らが小学四年生までに学んだ
「範囲」の知識のみを前提にして編んだ、
至極複雑な問題を、
塾で夜中の一〇時まで勉強させるよりも、
有意義な時間の使わせ方があると思いますよ。

つまり、「範囲」を広げるべきだ。
が-。


■「じゃあどうするか」
というと、実は難しい問題ではある。

普通に考えると、
「”算数縛り”はあんまりだから、
数学まで問題の範囲を広げようぜ」
ということになるのだろう。
これなら彼ら中学受験生たちは、
思いっきり数学をやることはできる。
少なくとも「算数縛り」よりは有意義に見える。

しかし、ここで立ち止まる。
「じゃあ、そいつらは中学行ったら何すんねん。
一度やった数学もう一回やるのは
それこそ無意味やねんから、
どんどん先に進むやないか。
それやったら周りとの教育格差は
どんどん広がるけど、
仮に日本の大学受けるんやったら
そいつらにとってはまた簡単な問題での競争になるんやろ?
いつかは縛りプレイになるんちゃう?」と-。

そうなのだ。
「学年別」「入試」
といったものを前提として、
そのなかで
「もっと勉強してこうぜ」
と、上に範囲を広げても、
いつかは「縛りプレイ」になる。

すべての学校教育は
「縛りプレイ」なのだ。

上述のように、
「範囲」を狭めた
「○○縛り」による争いは著しく不毛だから、
「範囲」は広げたほうがよいのは確かだ。

しかし、その「範囲」は
別に「算数・数学」だけである必要はないし、
「勉強」だけである必要もない


■というわけで長くなったのだが、
実は、前回・今回と本当に言いたいのは、
別に
「日本の受験制度の問題点」
とかではないのだ。

令和元年七月十一日
明瀬祐介(あかせゆうすけ)
acsusk@gmail.com
https://twitter.com/acsusk/


■(七月十二日作成)
学校は部活だけやってくれりゃいいんだよ!
https://acsusk.com/20190712-1-bukatsu/


■これは藤沢数希というひとのブログで、
「中学受験生がどれだけ勉強し、勉強ができるか」
「でもその能力はサイエンスとも仕事ともあんまり関係がない」
ということが書かれていて、最後の結論以外はおおむね同意する。
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52016451.html
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52016451.html
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52016514.html
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52016519.html


■ちなみに私はというと、
一応茨城県では珍しく、
私立の中高一貫校に行ったのだが、
東京とかの難関中学受験をしたことはない。
(だから本当のところはよく分からない)
仮に受けても箸にも棒にもかからなかっただろう。

-所感

執筆者:

関連記事

no image

二〇〇七年のミルグラム作戦。

■ぼくの通っていた大学では、春、入学式の前に三日間、新入生の健康診断があり、その健康診断から帰る新入生を目当てに各クラブ・サークルが引き込みを狙う新勧イヴェントがあった。 イヴェント運営側のスタッフは …

no image

秋のスポーツイヴェントの「もう終わってしまう感」。

■なんでも「の秋」をつけるとそれっぽくなるが、実際、よく言われる「藝術」も「読書」も、秋が一番やりやすい。(「食慾」だけは分からん。春も夏も冬も「食慾の」、である) そしてスポーツも。 競技にもよるけ …

俺たちはなぜVHSに惹かれるのか。

■かつて、「VHS」という物があった。 単行本くらいの大きさで、中に黒い磁気テープが入っている。 これをレコーダーに入れると、TVを九〇分くらい録画することができる。(画質を落とせば、三倍で録画するこ …

学校は部活だけやってくれればいい。

■前々回・前回と、「教育における、“縛りプレイ”で厳しい競争するのってまじで意味ねえよな」ということを長々と語ってきた。https://acsusk.com/20190710- …

現代日本には大臣が多すぎる。普通の閣僚は”卿”を名乗れい。

■律令制下、大臣の定員は二名だった。 よく聞く、”左大臣”と”右大臣”という、あれである。 臨時職として”太政大臣”、&#822 …