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なぜヒゲオヤジやのび助は和服を着ているのか。

投稿日:2019年7月31日 更新日:

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■「鉄腕アトム」が再版される際、
手塚治虫は、各エピソウドの冒頭に、
作者自身がその作品のポイントを語る場面を
追加した。

その中「赤いネコ」の冒頭では、
けっ、未来だってのに
なんであっしは畳にちゃぶ台で、
着物なんか着てるんでさあ

という風にたずねるヒゲオヤジに、
手塚が答えている。

「未来が舞台だからって、
いかにもな未来社会を描くと、
読者は白けてしまう。
だからあえて連載当時の風景を入れているのだ」
と-。


■「鉄腕アトム」は、
近年多くの漫画家によってリメイクされた。

が、ちょっと不思議なことに、
この、手塚の
「未来を昔っぽい風景にする」
という手法を、「アトム」で使った漫画家は、
まだいないように思う。

もちろん描きたいものが
それと違うなら仕方ない。
しかし漫画の神様が
わざわざ極意を教えてくれたのになあ、
とは思う。

まあ、今はアトムの時代も追い越した。
連載当時の昭和三十年代に至っては、
遥か遠い昔だ。

もう、普通に未来社会を描いた方が、
読者のなじみが深い、
ということなのかもしれない。


■ところで、
手塚の愛弟子に当たる、
藤子・F・不二雄の「ドラえもん」では、
当初のび太のパパは、家では着物を着ていた。

が、連載が進むにつれ、
普段着として着物を着る人がいなくなり、
ポロシャツやトレーナーを
着るようになったという。

藤子Fはそうやって時代に
対応していったのだ。


■ところが-。

最近の「ドラえもん」の映画では、
のび太のパパは、
再び和服に着替えている。

そのほかにも、
いかにも昭和の家庭に
あったような扇風機や家具、
のび太の部屋のポスターやペナント。
あえて今はもう存在しない、
古臭い風景を織り交ぜているのだ。
(こんにち、
子供と一緒にドラえもんを観た父親の、
その父親も洋服だったはずだ)


■これこれ、これが見たかったんだよ。

今の家庭風景を描いても、
正直、あんまり面白くない。

ほぼありえない和服のパパは、
往年のフアンの郷愁を誘う一方で、
幼いフアンには
「なにあれ?」
という新鮮さを与え、
「ドラえもん」というものの
歴史まで、さりげなく示す。

この、手塚の「昭和風未来」に
ちょっと通じる技巧。

これはさらっと英断だと、
俺は思うよ。

令和元年七月三十一日
アカセ
acsusk@gmail.com
https://twitter.com/acsusk/

-所感

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