アカセニッキ(明瀬祐介日記)

少しだけ役に立つ、または面白い内容を提供できれば。

所感

あえて、「学術研究に税金を使うな」と言ってみる。

投稿日:2019年10月5日 更新日:

■せんだって、科研費についての記事で、
統制経済・「一九四〇年体制」のこと
について考えた。

■ところで、この
「一九四〇年体制」
という言葉を作った野口悠紀雄は、
計画経済的な試みが
現在ではうまくいかなくなった
ことについて説明している著書
「戦後日本経済史」の中で、
宇宙開発について、こう述べている。

「分権的社会においては、
宇宙開発のような
大規模プロジェクトに
資源を集中するのは困難だ。
宇宙開発がいまにいたるまで
停滞しているのは、
当然である。」

https://www.shinchosha.co.jp/book/603596/


■令和元年の堀江貴文も、
ほぼ同じ認識だ。
(下記はまとめ)
しかし結論だけが異なっている。

「これまで宇宙開発は公共事業だったために、
コスト削減のインセンティヴが働かず、
停滞してしまった。
だから、民間がやればまた発展を続ける」

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64757?page=2


■一方、実際に宇宙開発の現場にいる
小野雅裕は、
「民間にできないことをするのが、国の役割」
として、
「分野を絞らず、
基礎研究に広く税金を使うべきだ」
というようなことを書いている。
以下のような文だ。

「世界最高の頭脳をもってしても、
10年後、100年後に世の中を変える
技術を予測することは極めて困難だからだ。
“iモード”に夢中だった
15年前の携帯ユーザーの誰が
現在のスマートフォンの時代を予想できたか?
宇宙といえばNASAやJAXAだった10年前に、
誰が現在のSpaceXの躍進を予想できたか? 」

いや、その例えを使うと
普通の人はその結論に行かない

その結論を導きたいなら、
俺ならその例えを出さないだろう。

スマートフォンは、
大学の研究室で研究をつづけて
できたものではない。
利潤を目指した民間企業が
最初から民生品として売り出したものだ。
SpaceXなんて、むしろ
「NASAやJAXAなどと違って(準)国営ではない」
ことが最大の特長ではないか。

(もちろん
「NASAのような公共機関は宇宙探査、
民間企業は輸送など、
と宇宙の中でも役割が異なる」
という、下記のような記事もある)

(なお、小野には
「宇宙を目指して海を渡る」
という名著があり、
これは多くの若者に読んでほしいと思う)


■ところで、木下斉は、
「補助金依存」について
次のような文章を書いている。
この人の
「補助金を使わない」
にはちょっと疑義もあるのだが、
それは措くとして、下記の、
「補助金依存」に関する図には、
大方の人が納得しよう。

https://note.mu/shoutengai/n/nefe8097092df

これを見ると、大体の人は、
「そうだよね、地方おこしに限らず、
補助金は本気で収益化を考えるようにならず、
結局依存して衰退してしまうよね」
と頷くのだが、
内心同時にこう思うようだ。

そうはいっても、
自分の業界(だけ)は、
完全に市場原理のもとで

事業を行なうのは難しいし、
それにはそぐわないから、
税金で事業を行なうのは仕方ない

科学研究の人 (自然も社会も人文も)
(と、アート界隈の人)に、
その傾向が強い。


■しかし、上述のように、
当初、野口が
「莫大な資源集中が必要なので、
民間企業の手にあまり、
公共事業として行うしかなく、衰退した」
とした、ビッグサイエンスの代名詞・宇宙開発すら、
一部は民間企業が担えるようになった。

各国が多大な予算を組んだヒトゲノム計画も、
それに競争する形で入り込んだ民間企業が、
研究を加速させた。

実はもう、科学技術研究を、
国家プロジェクトとして行う時代は
終わったのではないか。


■工学的な、
応用の効く分野であれば、
事前に支援を受けてもよいし、
成果を企業に売ってもよい。

それが難しい、
自然科学の基礎研究や、
社会科学・人文科学などであっても、
「広告を募る」
「研究の結果を出版や動画などで
社会に届けて資金にする」
など、いろいろ考えられる。

「税金依存」がなければ、
自然とみんな工夫し、
そういった方向で研究は進むはずだ。

(ちなみに、この出版事業のご時世に、
「知の衰退を食い止めたい」
と言って、
「人文の学術論文を売り出す」
という出版社を作った人がいる)

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59754?page=2


■「科学技術予算は要らない」-。

このようなことを書くと
いつもお叱りを受ける。
特に頭の良い人ほど反対するようだ。

私自身は三十三にもなって
本気でヤンキーに憧れる
反知性主義者だが、
知り合いの中には教養溢れる人、
芸術家肌の人もいるので、
大変厳しいご意見をいただいた。

「なるほど明瀬の言う通り、
確かにそういう部分もあろう。
しかし冥王星への探査機投入のような、
本当のビッグサイエンスは、
どうかんがえても資金回収が困難だ」

「人文科学の中の、
古文書を丹念に分析するような、
地味な研究だって、
民間企業がスポンサーになったり、
その成果をお金を出して知りたいという人は
ごく一部だろう」

しかし本当にそうか、
疑ってみる必要がある。
本庶佑は研究予算拡充の総大将だけれど、
その本庶佑だって言っているではないか。
「教科書に書いてあるからと言って、
信じ込んではいけない」と-。
疑問こそ諸学の出発点だ。
これは次回以降、引き続き考えていきたい。

少なくとも、
税金を使わずにできる範囲は、
今まで思っていた以上に広いし、
ますます広がっている。

「国家でないとできない」
研究なんて、
もうほとんど残されていないのではないか。

令和元年一〇月五日
アカセ(明瀬祐介)
acsusk@gmail.com
https://twitter.com/acsusk/


(つけたり)
■もちろん私とて、
「他の条件をすべて現状のままで、
科学や文化の予算をゼロにせよ」
とは考えていない。

ではどうするのかというと、
私の意見はすでに以下に書いたので
そちらを読んでいただきたい。

「おまえこれでほんとに
ビッグサイエンスも地味な研究も
できると思ってるんだろうな?ああ?!」
と言われると、まあ心配はあるんだけど。
結局やってみなきゃ分からんのだ。

が、逆に
「ベイスィックインカムなんぞなくても
学問研究は民営化できる」
という意見だってあるだろう。

-所感

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