南場オーナーのこと。
- 確か、DeNAがNPBに参入すると決めた、2011年のことだったと思う、ぼくのいた大学に、南場智子さんが講演に来た。
僕は落ちこぼれ学生だったので
「けっ、IT起業家かよ」
と思いながら、ちょっと思うところあって聞きにいってみた。
当時、“モバゲー”というサーヴィス名は一応知られていたけれど、“DeNA”という企業名も、南場智子さんも今ほど有名ではなかったように思う。
(少なくとも、「誰でも知っている」という感じではなかったのは確かだ)。
ぼくも南場さんのことは、その数日前に、たまたま名前と存在を知っただけだった。
(野球好きとしてのぼくは…、というと、ちょうどその頃、
「落合がドラゴンズの監督をやめさせられる」
という事があって、すっかり興味を失っていた)
- 会場は百人から二百人くらい入る、ホールのようなところだったけれど、学生は少なく、二、三割しか入っていなかったと思う。そしてみんな後ろの方に座っていた。
せっかくなので、そしてぼくはひねくれ者なので、前の二列目に座ってみた。
「ふん、マッキンゼー出身かよ、エリートじゃねえか」
なんて、若干の反感を持ちながら-。
- 詳しい講演の内容は忘れてしまったけれど、随所に笑いが含まれる楽しいものだったような覚えがある。
そして、一時間ほどで話が一通り終わり、質疑応答の時間に入った。
南場さんは壇上を降りて客席(?)のほうに歩いてくる。
「野球のことでもいいよ!」
なんていいながら。
しばらく質問がないのを見ると、南場さんは、たまたま唯一人、二列目に座っていたぼくのすぐ前の空いている席に座り、ぼくに話しかけたのだった。
「何か質問ない?」
南場さんは数秒間ぼくの前にいて、ぼくが、何も質問を出せずに怖気づいているのを見ると、また少し離れた場所に歩いて、ようやく誰かから出た質問に答えはじめた。
- その数秒で、ぼくはすっかり南場さんに魅了されてしまった。
だからといってDeNAのゲームをしたり、就活したり、株を買ったり、ベイスターズのフアンになったりしたわけではないし、あるいは南場さんの情報を追いかけたりしたわけでもないのだけれど。
先日、TVで、普段はあまり見ない、野球の試合を見た。
中川颯の美しいアンダーハンド。
筒香のフェンス直撃の大飛球。
そして、真っ青なスーツで、球団買収後、はじめてのベイスターズの日本一を喜んで三浦大輔とガッチリと握手し、両腕で万歳してベイスターズファンに答える南場さんの姿も。
それを見ながらふと思ってみる。
「あのとき、ベイスターズフアンになってもよかったかな」-。
- ぼくは野球選手個人のフアンになったり、そのときどきで応援する球団があったりはするのだけれど、地元にNPB球団もなく、実は“球団のフアン”になったことはない。
地元ティームがあるJリーグやBリーグ、独立リーグ、それに、日本代表や出身校には、一応応援する気持がある(それだって熱心なフアンではないけれど)。
しかし特にプロ野球には、
「選手や監督がきっかけで球団を応援しても、選手も監督も入れ替わっていくんだから」
なんてつい考えてしまうのだ。
そんなぼくでも、
「オーナーが好きだから球団が好き」
ならば、球団そのものを好きでいつづけられないか-。
- …と、私は一方的にしか知らないわけですけれども、5秒くらい近くで見ただけでそんな風に思わせるくらい、ほんっとに、ものすごい魅力的な人なんですよ、南場さん。
ネットを見ると、ベイスターズフアンからはもちろん、他球団フアンからも敬愛されているようで、つまりまあ、みんな知ってることなんだけれど。
(さらにどうでもいいことだけれど、私のよく買物するスーパーマーケットの店員の年恰好が南場さんと似ていて、この人も笑顔で接客しながらレジを打っていて、素敵である)
2024年11月07日公開
2024年11月07日更新