「横断歩道で止まってくれた車に対しお辞儀」は物理的に危険な場合がある
- 10年ほど前からだろうか、歩行者が
“信号のない横断歩道で止まってくれた車に対して深々とお辞儀をする”
という習慣が定着した。小学校などでも指導されているようだ。
この習慣に対して主に文化的な観点からの批判もある。が、それはひとまず考えない。
ただ訴えておきたいのは、
「“横断歩道で止まってくれた車に対しお辞儀”
というこの風習は、歩行者が怪我をしたり、場合によっては死亡につながるほど危険だから、やめるべき、やめさせるべきだ」
ということだ。
- とりあえず、横断歩道で渡った先が、縁石やガードレールのしっかりある歩道である場合、危険はない。
しかし世の中はそういう場所ばかりではない。渡った先が縁石やガードレールがない歩道であることも多い。歩道がない場所であることもある。
そこで子どもは指導通り、ドライバーに向かって例をする。礼をすれば、礼をしなかった場合に比べ、頭が数十cm車道側に来るわけだ。
歩行者が渡り終えた後、車は走り始める。前に出た歩行者の頭部と自動車のボンネットが衝突する危険がある。そしてこのとき、歩行者は下を向いていて、周りが見えないわけだから、より危険性は増す
先日もまさにこのような場面を目撃した。幸い衝突にはいたらなかったが、一歩間違えれば頭部が破損していただろう。
- ここで、いろんな対策案が出るだろう。
「ドライバーは歩行者が動き出さないか、しっかり確認してから走り出すべきだ」
…それはそうなのだけど、全国すべてのドライバーがいつも100%、ゆっくり動き出すか、といえばそれは理想の状態であって、現実にはそんなことはない。
「歩行者(子ども)に、
“縁石のない歩道等では礼をしない”、
または
“車道側に出ないように礼をするべきだ”
と指導したらよい」
…「礼というのは相手がいる場合、その相手に向かってする」
ということは無意識レベルで身体化されていているものだ(そしてこれは基本的に正しい振る舞いだ)。渡り終えたあと、
「今いるのは縁石のない歩道だから車道側に出ないように礼をしよう」
と瞬時に判断してお辞儀の角度を替える、というのは、特に子どもである場合、難しい。だいたいこの、お辞儀をするときというのは、止まっていた車が走って行ってしまうかもしれないし、少し慌てているわけである。
- そもそもこれらの、人間の“注意”“心がけ”に訴える対策は、一回の事故の確率をせいぜい何割か下げる効果がある、というもので、毎日、全国の無数の小学生が合計何万回、年間何百何千万回も行なっている行動に対して、てきめんに危険性がなくなるというものではない。
上述の理由から、私はこの風習を日本全国でやめるように(小中学校で)指導すべきだと考えている。
その場合にはドライバー側にも周知が必要だ。
(こちらもマスメディア広告や、自動車教習所・運転免許試験センターでの広報などで、すぐに定着しよう。
「夜間のライトは原則ハイビームで」
はいつの間にか定着したではないか(これには疑問がありますが))
2024年現在、件の
“横断歩道で止まってくれた車に対して歩行者が深々とお辞儀する”
という風習はすっかり日本全国の小中学生に定着してしまった。
一方のドライバーの方にも、中には
「止まってあげたのだから礼をされるくらいは当然」
と考えている人だっているかもしれない。
ひとまず、現段階では、ドライバーは、こういう、縁石のない歩道に着く横断歩道で止まった後には、
「渡り終えた歩行者が車道側にむかって頭部を差し出してくるかもしれない」
と、心に刻んでゆっくり走り出しましょう。
2024年05月24日公開
2024年05月23日更新